近年、日本は経済安全保障政策の分野で国際的に先駆的な国家として認識されている。本稿は、日本の経済安全保障政策をめぐる経緯を振り返り、その現状や意義、課題について論じるものである。(筆者:白石重明)
2023 年末、日本政治は自由民主党の清和政策研究会(安倍派)や志帥会(二階派)の政治資金問題に大きく揺れた。これは、両派閥が一部の議員の各派主催政治資金パーティーの売り上げノルマ超過分をそれぞれの政治資金収支報告書に記載せず当該議員に還流し、そして複数の安倍派議員がこれを自身の政治資金収支報告書に記載しなかったと疑われる事案である。本稿は本事案に端を発する政治への余波と政治改革について筆者の考察を論ずるものである。
日本では女性議員が少ないと言われて久しい。たとえば、本年6月に発表された世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数報告書によれば、日本の指数は146か国中125位という過去最低の結果となり、特に政治分野では138位に落ち込んだ。実際、議会における女性比率を見てみると、戦後初の第22回総選挙(1946年)で当選した女性議員の割合は8.4%、そして直近の第49回総選挙(2021年)では9.7%であり、実に約70年もの間、実質的に増加していない。一方、参議院における女性議員の割合は第26回参議院通常選挙(2022年)後の時点で25.8%となった。
このため、近年クオータ制導入の必要性が強く認識され、政治分野における男女共同参画の推進に関する法(政治分野男女共同参画推進法)が成立、施行されるに至った。本法律は各党の男女候補者数を出来る限り「均等」にすることを原則とすると同時に、男女候補者数の目標値設定について努力義務を課している。第26回参議院通常選挙においては、立憲民主党と共産党に限って50%以上の女性候補者を擁立し、意義ある立法措置となったが、政治分野における男女共同参画には依然遠く及ばず、その実現のためには様々な側面からの努力が必要である。
本稿は女性議員の割合を高めるために必要とされる施策の内、クオータ制を巡るドイツの政党による事例を紹介し、本邦における議論に供するものである。なお、クオータ制とは、格差是正のためにマイノリティに割り当てを行うポジティブ・アクションの手法の一つであり、政治分野におけるジェンダー・クオータとは、議会における男女間格差を是正することを目的とし、性別を基準に女性または両性の比率を割り当てる制度を指す。
国家安全保障戦略等の防衛3 文書改定に向けた作業が政府・与党において精力的に行われ、12 月16 日その閣議決定が行われた。 本稿執筆時においてロシアによるウクライナ侵攻、中国の軍事動向、北朝鮮による断続的なミサイル発射は、国民の安全保障を巡るメンタリティーにも大きな影響を及ぼしている。無用に危機感を煽ることをよしとしないが、現下の状況を鑑みれば、日本を取り巻く安全保障環境は悪化の一途を辿っていると捉えるのは妥当である。そのような安全保障環境の中においても日本の安全保障政策は専守防衛を旨とし、武力攻撃を受けた場合も均衡性以上の必要最小限度という制約を受ける。本稿は必要最小限度について述べ、その在り方を巡る議論について考察し、 論じるものである。
日本が抱える世界的に見ても低い女性管理職率などのジェンダーに関する問題の根幹には、日本独自の雇用慣行が大きく関わっている。本稿では、日本型雇用慣行の概要を論じるとともに日本型雇用慣行のジェンダー状況への影響について示し、今後政府がとるべき政策を提案する。
近年の国際情勢の動きは、グローバル化の失敗を増幅させた。サプライチェーンの寸断、食糧とエネルギーのインフレ、新型コロナウイルスの世界的流行において少数の多国籍企業に利益を流すことになった知的財産権から生じるワクチンの不公平な分配などである。これらの問題への対応策として提案されているのは、リショアリングやフレンド・ショアリング、国の生産能力を高めるための産業政策の制定`などである(Stiglitz, 2022)。グローバル化に対する賛同は、経済発展と安全保障のために少なくともある程度の国境は必要であるという認識へと変化したようである。
グローバル化はその頂点に達したのだろうか。その衰退をいかにうまくコントロールするか。このような観点から、コンラート・アデナウアー・シュティフトゥング(KAS)のアジア経済政策プログラム(SOPAS)は、以下のトピックに焦点を当てた5つのペーパー「脱グローバル化エッセイシリーズ」を発表する。脱グローバル化は経済と経済政策にどのような影響を与えたのだろうか?
脱グローバル化エッセイシリーズ、最終回は「脱グローバル化への軌跡:問われるドイツのレジリエンス」と題するエッセイだ。現在のドイツにおける国際経済政策立案の議論に影響を与えている2つの重要なファクター、すなわちロシアの対ウクライナ戦争と中国との戦略的競争について考察する。
脱グローバル化エッセイシリーズ4番目のエッセイは、南アジアにおける貿易関係の発展について考察し、南アジア諸国がこの地域の強力な上昇ポテンシャルを活用するための道筋を示すものである。
脱グローバル化エッセイシリーズ第3弾「⽶国 貿易不均衡軽減と保護主義との戦い」では、なぜ米国とその貿易相手国が自由貿易を促進し、保護主義を生み出す圧力と戦う必要があるのかを考察している。
「脱グローバル化、減速の可能性:経済成⻑と制度的改⾰」と題された脱グローバル化エッセイシリーズ2番目のエッセイは、世界経済が高度に相互に結びついているため、脱グローバル化によって主要経済国である国と途上国との格差がさらに深まることを説明する。さらに、脱グローバル化の影響により、各国、そして世界全体が直面する課題についても考察している。
脱グローバル化エッセイシリーズ最初のエッセイ「開かれた戦略的⾃律性:サプライチェーンの安定に向けた欧州のアプローチ」は、欧州連合が開かれた戦略的⾃律性(Open Strategic Autonomy)の概念を用いて、政治的・経済的依存のリスクに対処し、安定したサプライチェーンを確保する方法について考察している。