国家安全保障戦略等の防衛3 文書改定に向けた作業が政府・与党において精力的に行われ、12 月16 日その閣議決定が行われた。 本稿執筆時においてロシアによるウクライナ侵攻、中国の軍事動向、北朝鮮による断続的なミサイル発射は、国民の安全保障を巡るメンタリティーにも大きな影響を及ぼしている。無用に危機感を煽ることをよしとしないが、現下の状況を鑑みれば、日本を取り巻く安全保障環境は悪化の一途を辿っていると捉えるのは妥当である。そのような安全保障環境の中においても日本の安全保障政策は専守防衛を旨とし、武力攻撃を受けた場合も均衡性以上の必要最小限度という制約を受ける。本稿は必要最小限度について述べ、その在り方を巡る議論について考察し、 論じるものである。
日本が抱える世界的に見ても低い女性管理職率などのジェンダーに関する問題の根幹には、日本独自の雇用慣行が大きく関わっている。本稿では、日本型雇用慣行の概要を論じるとともに日本型雇用慣行のジェンダー状況への影響について示し、今後政府がとるべき政策を提案する。
近年の国際情勢の動きは、グローバル化の失敗を増幅させた。サプライチェーンの寸断、食糧とエネルギーのインフレ、新型コロナウイルスの世界的流行において少数の多国籍企業に利益を流すことになった知的財産権から生じるワクチンの不公平な分配などである。これらの問題への対応策として提案されているのは、リショアリングやフレンド・ショアリング、国の生産能力を高めるための産業政策の制定`などである(Stiglitz, 2022)。グローバル化に対する賛同は、経済発展と安全保障のために少なくともある程度の国境は必要であるという認識へと変化したようである。
グローバル化はその頂点に達したのだろうか。その衰退をいかにうまくコントロールするか。このような観点から、コンラート・アデナウアー・シュティフトゥング(KAS)のアジア経済政策プログラム(SOPAS)は、以下のトピックに焦点を当てた5つのペーパー「脱グローバル化エッセイシリーズ」を発表する。脱グローバル化は経済と経済政策にどのような影響を与えたのだろうか?
脱グローバル化エッセイシリーズ、最終回は「脱グローバル化への軌跡:問われるドイツのレジリエンス」と題するエッセイだ。現在のドイツにおける国際経済政策立案の議論に影響を与えている2つの重要なファクター、すなわちロシアの対ウクライナ戦争と中国との戦略的競争について考察する。
脱グローバル化エッセイシリーズ4番目のエッセイは、南アジアにおける貿易関係の発展について考察し、南アジア諸国がこの地域の強力な上昇ポテンシャルを活用するための道筋を示すものである。
脱グローバル化エッセイシリーズ第3弾「⽶国 貿易不均衡軽減と保護主義との戦い」では、なぜ米国とその貿易相手国が自由貿易を促進し、保護主義を生み出す圧力と戦う必要があるのかを考察している。
「脱グローバル化、減速の可能性:経済成⻑と制度的改⾰」と題された脱グローバル化エッセイシリーズ2番目のエッセイは、世界経済が高度に相互に結びついているため、脱グローバル化によって主要経済国である国と途上国との格差がさらに深まることを説明する。さらに、脱グローバル化の影響により、各国、そして世界全体が直面する課題についても考察している。
脱グローバル化エッセイシリーズ最初のエッセイ「開かれた戦略的⾃律性:サプライチェーンの安定に向けた欧州のアプローチ」は、欧州連合が開かれた戦略的⾃律性(Open Strategic Autonomy)の概念を用いて、政治的・経済的依存のリスクに対処し、安定したサプライチェーンを確保する方法について考察している。
冒頭、選挙戦の最中に逝去された安倍晋三元総理大臣へ心から哀悼の誠を捧げる。あのような形で安倍元総理が糾弾に倒れたことに国民が深い悲しみを覚えた。これまでのご功績に心より敬意を表する。先般の参議院選挙は、自由民主党の大勝という形で終わった。本稿は、とりわけ今回の選挙が主要な政党に今後及ぼすインプリケーションについて述べるものである。
日独は普遍的価値を共有する戦略的パートナーであり、エネルギー環境分野での協力は二国間協力関係の柱の一つである。筆者は2016 年以降、日独エネルギー変革協議会のメンバーであり、二国間協力の一端に関与してきた。本稿では筆者の経験を踏まえつつ、日独エネルギー環境協力の現状と今後の課題について私見を述べたものである。
16年に及ぶメルケル政権に終止符が打たれドイツに新政権が発足した。インド太平洋地域におけるドイツの継続的で発展的な関与が求められる中、新政権下でその戦略の実行が不安定になる可能性がある。また、インド太平洋戦略の利害関心がEU内で発散しており、軍事的関与の側面が曖昧になっている。そこで本稿では、インド太平洋における「ルールに基づく国際秩序」形成への多角的な取り組みと、米中大国間競争に対する「安全保障情勢」への軍事的関与を分けて推進することを提案する。これによってドイツ・EUは、インド太平洋戦略において日本の「自由で開かれたインド太平洋」やASEANのインド太平洋政策と協力を進展させ、同地域の安全保障に軍事的貢献を果たすことが可能となる。